Historyキャブの歴史

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キャブ株式会社の前身は、1930年（昭和5年）に創業した「辻󠄀合名」です。私たちの歴史はここから始まります。当初は、鉄道省や逓信省^※1からの放出品^※2を扱う入札業の会社でした。戦争で一時的な中断はありましたが、1947年に「辻󠄀喜八郎商店」として再出発し、新たにアメリカ軍の放出品の取扱いを始めました。アメリカ製衣料は、原材料から縫製・加工・設計、すべてにおいてクオリティが高く丈夫で高機能。この当時世界でもっとも豊かな国が手がけた“Made in U.S.A.”の品質に強く魅了され、私たちのものづくりがスタートしました。1955年頃には、旧本社所在地である名古屋市中村区名駅二丁目（旧・中村区広井町）に移転し、私たちキャブ株式会社の礎が築かれていきました。

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1960年代に入りアメリカ軍放出品の供給が減少したことで、私たちはオリジナル製品の開発を本格的に開始しました。「米国軍規格」^※3を入手し研究を重ね、実物を何着も分解することで製法を特定。確かな品質をもつキャブオリジナルウェアの礎を築いていきました。この探究心こそが、国内での量産化を成功させる原動力となっています。
1965年には、名古屋市の紳士服縫製団地内に「辻󠄀喜八郎商店 三好工場」を開業し、防寒作業着やミリタリー製品の量産を開始。なかでも「キャブ・カストロコート」は大ヒットを記録し、象徴的な存在となりました。現在でも「カストロコート」といえば防寒用アウターを指すことばとして使われています。1970年代には中国でカットソーの生産を開始。
この頃の生産背景が、後の“ミリタリーのキャブ”というイメージ、そして現在の「United Athle」の基盤となっています。

※1 逓信省：かつて日本に存在した郵便や通信を管轄する中央官庁
※2 放出品：官庁から民間に払い下げられた物資
※3 米国軍規格（Mil-Spec.：ミルスペック）：米国における軍用品の調達規格の総称、とりわけ米国国防総省が規定する装備品の耐久性能に関する規格の通称

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米軍フライトジャケットやカストロコートのレプリカ開発をきっかけに、ミリタリー製品のレプリカ製造を本格的に始めたのがこの時代です。当社の代名詞とも言えるミリタリーブランド「C.A.B. CLOTHING（キャブクロージング）」を立ち上げ、当時のミリタリーブームを牽引する企業の一つへと成長しました。製造にあたっては、アメリカでデッドストック^※1やサープラス^※2を買い付け、研究を重ねることでパーツや小物に至るまでこだわり抜いた妥協なきものづくりを追求しました。ナイロン製フライトジャケットの製造にあたっては、本物を再現するため日本ではすでに希少だった“66ナイロン”^※3を原反メーカーと協力して復元。「ミリタリーのキャブ」として確固たる地位を築きました。技術の進化とともに失われつつあった製法の再現には、生地やパーツの素材開発に多大な時間とコストを要しましたが、お客様を思い、妥協を許さない姿勢を貫いたことで、本格レプリカをお手頃な価格で提供する唯一無二のアパレルメーカーへと成長したのです。また、ラスベガスの世界最大級のアパレル展示会「MAGIC」やパリの「セム・ショー」など国際展示会へも積極的に出展しました。

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同じ頃、卸先の廃業を機に自衛隊駐屯地内での直接販売を開始。2002年には自衛官向けブランド「J.G.S.D.F.」が誕生します。これまでのレプリカ製造の知見を活かし、訓練用ウェアや小物の生産を拡充。高機能かつコストパフォーマンスに優れた製品は高評価を得て、PKO活動やイラク復興支援でも隊員の私物として使用され、実用性と信頼性を武器に、現場での認知を着実に広げていきました。
そうした「J.G.S.D.F.」ブランドの活躍の裏側では、アメリカで大流行したヘヴィーウェイトTシャツに着想を得て、無地アパレルブランド「United Athle」がついに誕生（1998年）。私たちは、ものづくりのノウハウを着実に積み上げていきました。

※1 デッドストック：長期保管された未使用品
※2 サープラス：軍の放出品
※3 「66ナイロン」：アメリカ・デュポン社が開発した高分子ポリアミド系合成繊維

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1990年代初頭、アメリカではヘヴィーウェイトTシャツが大流行していました。「アメリカブランドのTシャツ」は、肌着とは異なり、アウターとして一枚でかっこよく着られる、厚手で丈夫なアウターとしての地位を確立していたのです。私たちは、その“Made in U.S.A.”品質を超えるTシャツを、よりリーズナブルに提供できないかと試行錯誤を重ね、無地アパレルブランド「United Athle」を誕生させたのです。ブランド名には「世界に通用するグローバルブランドとして、品質をともなったデイリーウェアを開発したい」という想いが込められています。
2002年には品質管理部門を設け、専門スタッフによる徹底した品質管理を実施。同年登場した「United Athle」のフラッグシップモデル「5942 6.2オンス プレミアムTシャツ」は、型崩れしにくい品質で高い支持を得ました。2007年には「5001 5.6オンス ハイクオリティーTシャツ」も加わり、現在では約150アイテム・6,000SKUを展開する国内最大級の無地アパレルブランドに成長しています。

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しかし2009年、「5001」の生産で当社史上、もっとも重大な品質事故が発生。飛び込み^※1・汚れ・穴あき・糸切り不良^※2などが相次ぎ、約50万枚の全数検品を実施。その結果、約5.5万枚が正規品として販売できない品質でした。これを機に「キャブ品質基準書」を全面刷新し、2010年には現地法人「青岛希爱布商贸有限公司」を設立。生産現場に自社スタッフを常駐させ、現場密着型の管理体制を確立しました。
当社の歴史のなかで生まれた「ヘヴィーデューティーなものづくりへのこだわり」「タフでなければ製品ではないという創業からの信念」「シンプルだからこそ、素材・機能にまでこだわり抜く姿勢」、これらの想いは今も、ものづくりのアイデンティティーとしてキャブ株式会社全体に受け継がれています。

※1 飛び込み：生地とは違う色の糸が混入すること
※2 糸切り不良：縫製工程の仕上げに糸の始末をすること